魔界動乱期
「色々あんだな、国ってやつも」

「ジードもこれから仲間になるんだろ?うまくやれば、君の実力ならすぐにのしあがれる。申し遅れたが、僕はホルン。この師団の副師団長だ。これからよろしく」

「あ、ああ」

「ちなみに僕も魔獣の森討伐には参加していない。セレナ様の部隊だったし、同じ北の大陸ユーロネシア出身だからね。僕にはあのラウドが悪に墜ちたなんて信じられない。……だが、アバル様が言ってるから本当なんだろう。残念だけど、魔族は変わるんだ」

「けっ、お前も結局はトップの言いなりなんだろ……」

「ん?なんだい?」

「なんでもねえよ」

またしてもジードはアバル国軍の知られざる一面に、知りたくない一面に触れてしまった。
セレナという魔族は、アバル軍でなければ敵視する理由が見当たらない。
アバルの命に背き、市民のために行動する素晴らしい志を持った魔族だ。
さらに彼女は、ラウドの事を敬愛している。

ホルンと話しながら歩いていると、やがてひとつの村が見えた。

「お待ちしておりました、セレナ様!」

一行を迎え入れたのは、村の代表者なのだろう。
立派な衣服を来て、数魔の村民を引き連れている。

「なんか、聞き覚えのある声だな……、え!?」

村の代表者が最後尾にいたジードの存在に目をやる。

「あれ?お前……ジードか?ジードじゃないか!?」

「ケルゲリオか!?」

村の代表者として現れたのは、ジードが魔獣の森で出会った賞金稼ぎケルゲリオだった。

「そういやあ、セル山脈の麓の村に住んでるとか言ってたよな……あ、まじぃ!」

「ケルゲリオ殿、あのジードという魔族をご存知で?」

「え、ええ。ジードとは魔獣の……」

「おお、ケルゲリオ!な、懐かしいな!約束どおり、会いに来たぜ!……おい、俺が魔獣の森にいた事は内緒にしてくれ!」

ジードはおおげさにケルゲリオに、抱きついて、耳元で囁く。

「え?あ、ああ。だけど、後で説明しろよ。……セレナ様、ジードとは昔の友達なんですよ」
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