魔界動乱期
その頃、魔獣の森の高台にはルークが訪れていた。

「ジードに、ゆっくりアバルを見てまわれって言ったんだろ？下手すりゃああいつとカチ会う事もあるんじゃねえか？俺はアバルの地理はよく知らねえけどさ」

「ケルベロスの事か？そうだな、その可能性もある」

「ケルベロスは強えぞ。あの当時、俺とヤツは同等だった。あれから何十年も経ってるんだ。今の力は計り知れねえ」

「ふっ、お前の得た強さに敵うはずがないよルーク。あれを機に、お前はウルフの統一に乗り出した。仲間が何倍にも膨れ上がったんだ。仲間の多さとお前の強さは比例するからな」

当時、ルークはウルフの中で最も大きな集団を形成していたが、それでも仲間の数は百五十魔ほどだった。
ルークは、森にいる者は強さに真摯でなければいけないという考えを持っていた。
絶え間ない生存競争も、強者が残るためにあるべきものだったのだ。
同じ種族が再び過ちを犯さぬよう、ルークはウルフの統一に乗り出したのである。

「そんな変わってねえと思うけどなあ……」

ウルフは元々仲間意識が強い。
仲間のために戦うときには限界を越えた力を発揮する。
その上ルークは軍団の三千魔のことを家族と考えているから尚更だ。

「仲間のために戦うお前の姿は、ジードの中にも浸透しているよ。私が机上論でしか教えられなかった事をお前は実践を通して教えてくれた。ジードが危機に陥ったとき、それはきっと役に立つ」

「どっちにしろ、今のジードが戦うには危険な相手だ。出会わねえのが一番だけどな……」

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