魔界動乱期
一方、ケルゲリオ邸では、セル山脈の魔獣退治に向けて、食事をまみえながらの話し合いが持たれていた。

「まず、セル山脈の経路ですが、俺は何度も侵入を試みているから大体わかります。主力の魔獣がいる場所も」

ケルゲリオは村の地主であり、且つ賞金稼ぎもしている。
村では一番の金持ちで、それなりの魔力も持ち合わせているケルゲリオは、調子の良い性格も手伝って村民から慕われていた。

セル山脈の主力はケルベロス、サーベルタイガー、サイクロプスの三魔で、この三魔には賞金が懸けられている。

「これとこれ、それからこれもまだある?」

話し合いそっちのけでひたすら食べまくるジードを、ケルゲリオだけでなく他のアバル兵もやや呆れ顔で眺める。

「一体何魔分食べるんだお前はよお。お前も皆さんと一緒に行ってくれるんだろ?」

ケルゲリオの問い掛けに、ジードは一旦箸を置く。

「やだね」

セレナはキッとジードを睨み付け、すぐにケルゲリオへと顔を向けた。

「ケルゲリオ殿、彼は放っておいて話を進めましょう。ご友魔をセル山脈へ連れていっても、残念ながら責任はとれませんから」

「あ……、じゃあ……」

気まずい空気を察したケルゲリオは、話し合いに意識を集中しようとする。

「俺だけでいいって事だよ。足手まといがいたんじゃあ、邪魔になるだけだからな」

その場にいたアバル兵は、怒りの形相で一斉にジードを睨む。

「ジード!お前、いいからどっか行ってろ!」

「じゃあ聞くがよ?セル山脈のヤツらは元々は魔獣の森で幅きかせてたヤツらなんだぜ?そんな化物相手に、一魔の犠牲も出さずに乗り越えられると思ってんのか?」
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