魔界動乱期
「今だジード!!」

やや遠目からの声にジードは無意識に反応し、モルキへと突進する。
そして全ての力と魔力を右手に込め、モルキの土手っ腹を突き上げた。

「ぐはあっ!!」

吐血しながら天高く舞い上がるモルキ。
想像を絶するダメージだったが、ボディへの攻撃だったのがモルキにとって幸いし、辛うじて意識はつなぎとめる。

「うぐぐ……、このダメージでは、戦闘は無理か」

モルキは残された力で大量の水を勢いよく噴射し、遥か彼方へと飛び去った。

「モルキが逃げた……。ジード、やったな!」

ニコの言葉を意識の片隅で捉えつつ、ジードは先程の声の方向に目をやる。

「あ、あいつは……」

ジードはその姿を確認し、驚きの表情を浮かべた。

「グレオ!!」

そう。
木の能力でモルキの隙を衝いたのは、恐怖に打ち克ったグレオだったのである。
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