魔界動乱期
セレナはジャンプすると同時に氷のシールドを張り巡らし、炎を消したのである。

「あの女、相当出来るな。大抵のヤツは今の攻撃で終わりなのに。遊んでる余裕はねえか」

セレナの実力を本物と判断し、油断を打ち消したサーベルタイガーもまた強者と言えた。
そしてサーベルタイガーが集中すると、ビキビキという音を立て、体が変化を起こす。

セレナは、サーベルタイガーの体がやや小さくなったような印象を受けたが、その質は別物だった。
小さくなったのではなく、それはより機動力をつけるための引き締めで、四本の足は太ももにあたる部分の筋肉がパンパンに膨れ上がる程の太さに変化する。

「あれは……」

たちまち凄まじい魔力が辺りを覆う。
サーベルタイガーは変身型の魔獣だったのだ。

「くっくっく……。この姿になったからには万が一にも貴様の勝利はなくなったぞ」

セレナは剣を構え、サーベルタイガーの攻撃に備える。

「俺の魔力に驚いているだろうに、顔色を変えんとは大したものだ。では……」

サーベルタイガーが、その太く膨れ上がった足で地面を蹴ると、一瞬でセレナのもとへ到達する。

「くっ!」

セレナは先程と同じように、剣でサーベルタイガーの牙を防いだ。
しかし、今度は攻撃的防御をする間もない。
ただ受けただけの防御は、サーベルタイガーの牙を逃れたのみで、セレナは激しく吹き飛ばされ、森の巨木に打ち付けられた。
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