魔界動乱期
「ははっ、悪い悪い。そんなに怯えるなよ。戦う気はねえからよ」

「怯える……だと?」

そんな事はない、と口にしようとしたジードだったが、全身に立った鳥肌や額から流れる冷や汗に気付き、口ごもる。

「おっさん……アバルの魔族?」

「違え違え」

「じゃあ何しにここへ?」

「俺はゾーマを……おっと、まあ、なんだ、アバルの首都に興味があってよ。ま、所属くらい教えてやってもいいか。俺はな、魔穿義団のリョーザってんだ」

「マセン…ギダン?リョーザ……」

「ふっ、驚いたろ?あの最近話題の魔穿義団が目の前にいて」

「な……何、それ?」

「あ、知らないんだ……」

金髪の魔族は魔穿義団のリョーザと名乗った。
魔穿義団はラウドの親友、バルザベルクが結成した、世にはびこる悪を穿つ正義の軍。
そのメンバーがアバルに来ていたのだ。

「俺はジード。俺もアバルの首都目指してんだ。あ、そういえば、ケルベロスがどこにいるか知らない?」

「うーん、わからねえなあ。そいつにも多分、避けられちゃってるだろうからな」

「そうか……」

「なあ、ジードは首都に何しに行くんだ?」

「俺は、首都で働くためさ」

「ほうほう、そうだったか……」

その瞬間、リョーザの空気が変わる。
先程まで抑えていた例の魔力を、一気に解放したのだ。

「な、なんだよ!?」

「アバル軍てわけならさ、今片付けた方が後々楽かなってな!」

「ぐほっ!」

リョーザは突然、ジードのみぞおちにパンチを放った。
宙に舞うジード。

「へえ、あの不意打ちを防御するかね」

ジードはしっかりと両手をクロスさせて防ぎ、クルンと空中で回転して着地する。

「おい!なんで戦うんだ!!」

「今から死ぬヤツに話しても意味ねえさ……」
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