魔界動乱期
「よし!これでスッキリしたぜ。なんせ何の関係もねえお前を殺そうとしちまったんだからな」

リョーザが戦闘体勢に入ったとき、セレナやホルンの身を案じたジードはひとつ嘘をついた。

「片田舎から出てきたお前が首都で兵士じゃなく商魔になるつもりだったとはよ。あの魔力なら軍を目指すと思うだろうが」

「は、はは……」

勘違いをしたと思ったリョーザはジードに平謝りし、何かひとつジードの手助けをすると申し出たのである。

「さっきのここでの魔力……お前、やっぱウチに来いよ。俺が推薦してやるぜ?」

「いや、今はやらなきゃいけない事があるから」

「……そうか。じゃあ俺は行く。あ、首都に来るんだろ?また会おうぜ。立派な商魔になれるように応援するぜ!じゃあな!」

ジードは複雑な笑顔を作る。

「お、おう、任せとけ!……はは、なんか悪い事したな。結局あいつ、目的を教えてくれなかったけど、根は良いヤツなんだろうな。それにあの、デグタスさんの戦闘時のような巨大で狂暴な魔力……。魔穿義団ってのは一体……」

森の外では残党のウルフとアバル兵の激しい戦いが行われていた。
ケルベロスは死に際に狼笛で自らの敗北を告げ、それに伴い手下のウルフ達は森の外へと次々に出てきたのである。

約八十魔のウルフに対して、アバル兵二十魔。
数では圧倒的にアバル国軍側が劣るものの精鋭揃いの兵達は、統率の取れていないウルフを見事に駆逐した。
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