魔界動乱期
その頃ケルゲリオは、ジード達の帰りを落ち着かない様子で待っていた。
無傷で戻ってきてほしい。
そう願っていたが、その可能性は正直低い。
それをわかっているケルゲリオは、近隣の村からも声をかけた医者達を、この村の病院に呼び集めていた。

「ケルゲリオ!」

「ジード!!……セレナ様とホルン様!討伐は失敗したのか!?」

意識のない彼らを見たケルゲリオは、最悪の事態を想像してしまう。

「主力は倒した!この二魔の治療を頼む!俺はアバル国軍の加勢に……」

そのとき、村の外からアバル兵がゾロゾロと帰還する。

「ジード!」

リーダー格のアバル兵、カンボスが剣を高々と上げて勝利の意を示すと、集まっていた村民から歓声が沸き上がった。

「やってくれたか!!……あ、ジード!医者を病院に集めてる。すぐに連れていこう」

残党と戦ったアバル兵達も皆傷を負っていたが、命に関わるような者は皆無。
その後、医者の手当てを受け、ホルンは重傷だが命に別状はないとの事だった。
しかしセレナは……

「セレナ様は全身のダメージに加えて、出血量が多すぎます。輸血を行えれば助かる見込みも増えるのですが、ここにいるアバルの方々の血液型では、セレナ様のものと合わず……」

医者が言うには、セレナは‘WBB型’という非常に珍しい血液型で、この血液型は二百万魔に一魔の割合しかいないという。

「俺の……俺の血はどうなんだ!?怪我してないから調べてねえだろ!?」

「で、では、一応」

医者は無理だろうと思いながらもジードの血液を調べる。
すると、みるみるうちに医者の顔つきが変わっていった。

「こ、これは……!?あなた、普通のヒューズですか?それとも何か特別な種族では?」

「知らねえよ!で、どうなんだ?使えるのか?」

「こんな血液は見たことがない。試しに、セレナ様の血と混ぜ合わせてみましょう。………抵抗反応がない!ジードさんと言いましたね!かなりの血液を採取しますがよろしいですか!?」

「いくらでも取ってくれ!」

ジードはセレナの隣に座り、医者は針のついたチューブをジードの腕に刺した。
そしてそれを直接セレナの腕へとつなげる。
< 344 / 432 >

この作品をシェア

pagetop