魔界動乱期
二日後、ボロジールの村。

「セレナ様が参ったようです」

ボロジールの温泉宿が物々しく動き出す。
時全情報によるとセレナは黒い衣服に身を包み、フードのような物を被って顔を隠しながら旅をしているという。
その黒装束の魔族が、アバルの招待状を持って宿に入ったのだ。

「アバル様のご招待だからか、客が一魔もいないな?」

セレナが宿に足を踏み入れると、突然多くの魔族が呪符を掲げながら周りを取り囲んだ。

「お前達、何者だ!?……魔力が?」

そのとき、一魔の魔族がツカツカと目の前に現れた。

「セレナよ。お前の旅はここで終着だ」

出てきたのは第一師団副師団長のエドガー。
元第八師団長のゼロスの血縁関係にある魔族である。

「やはり……予感は当たっていたか」

「貴様は!?」

セレナと思われた魔族が黒装束を取り去ると、姿を露にしたのはホルンであった。

「セレナ様を無理矢理説得して僕が来た甲斐があったよ。しかしまさか、あなたのような大物が動くとはね。これは、アバル様の命ですか、エドガー様?」

エドガーはその出来事にも余裕の態度を見せる。

「ヅェシテ将軍からの命だ。ふ、お前がここに来たのは誤算だったが……殺す場所が入れ替わっただけだ」

するとエドガーは誰かと交信を始め、すぐにそれを終える。

「誰と交信をしていたのですか?」

「ホルン、お前を殺すための魔族をセレナの自宅に向かわせただけだ」

「なんだって!?……うぐっ」

ホルンが激しい動揺を見せたとき、エドガーの指先から魔力を凝縮させた鉱物の塊のようなものが、ホルンの心臓を貫いた。

「セ、セレナ……様……」

「くっくっく……。頭の切れる魔族ホルン。こいつの死体は私が預かろう」
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