魔界動乱期
翌朝、アバルの全ての街村でスクリーンが映し出され、放送が流れる。

「第八師団長のセレナはダークエルフであり、謀反を企んでいる事が判明した。よって、共謀者であるホルンは処刑し、セレナはアバル国軍一名を殺害し逃走……」

この放送を、セグルスツに滞在中のジードも見ていた。

「セレナが謀反！？そんな事があるか！しかもダークエルフである事を。あいつがそれでどんなに苦しい思いをしているか……！」

ジードは第八師団の領地に行こうと思ったが、踏みとどまる。
もうそこにはきっとセレナはいないに違いないからだ。

「くっ、念交信も拒絶されている！魔獣の森か？それか、ホルンを殺されたセレナは復讐を……、セレナ、早まるなよ！」

首都アバルへ向かうのであればセグルスツを通るのが一番の近道である。
ジードはセレナの魔力を少しでも感じ取ろうと集中した。

「くそっ、魔族の数が多すぎて判別出来ない！ならば、俺が先に首都へ入った方がいいか！」

ジードは、セレナが魔獣の森に来たときのためラウドに交信でこの事を伝えつつ、急いで首都へと向かった。
その頃、アバルの最南端の山にセレナの姿があった。
その山からは魔獣の森が一望出来る。

「暗軍のメンバーを殺した私は裏切り者だ。もうアバル軍には戻れない。こんな汚れた身ではラウド様にも。それに……ジード、どうやら‘他愛のない話’は出来そうにない。私は……ホルンを殺したエドガーを許さない！」

それからセレナは、しばらく姿を消す事になる。
静かに、その時を待つかのように。
復讐に燃えた闇の歴史が、再び現代に蘇る。
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表紙・目次

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