魔界動乱期
「国軍の選定には口出し無用。ガルバイルよ、貴殿は月に一度の顔見せでアバル様にご挨拶をしてさっさと戻るのだな」

ヅェシテは皮肉めいた言葉をガルバイルに浴びせる。

「じゃあジードは第一師団はおろか、アバル正規軍にも入軍出来ないって事なんだな?」

「必要ない」

ガルバイルはそこでニヤリと笑う。

「じゃあ決まりだ。ジードは今日から暗軍のメンバーだ」

「え?俺が、暗軍?」

するとヅェシテの顔付きが、明らかに怒気をはらんだものに変わった。

「ガルバイル、貴様!」

「暗軍の選定は全て俺に任されている。特に今はメンバーの数が減って困ってたときだからな。ジードが入れば十分補える」

ジードがアバルにおいて果たした役割は大きい。
そしてそれは、生半可な実力の持ち主では到底不可能な偉業と言えるのだ。
更に大々的に取り上げられて国民の支持も得られた。
暗軍のメンバーに入れる理由として、アバルに推薦するのに申し分ないものが揃っていた。

「ジード、お前に過酷な道のりを教えた甲斐があったぜ」

「ああ、だからクーリンさんが焦ってたわけね……。あんたが一番食えねえ男だったんだな」

「性格が良けりゃあ、暗軍リーダーなど務まらんよ」

ヅェシテはギリギリと奥歯を噛み締め、城内へと入っていった。

「さあ、俺達も行こうぜ。王に挨拶してお前も紹介してやる」

「あ、ああ」
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