魔界動乱期
王の間に入ると、ガルバイルが片膝をついて頭を垂れた。
見よう見まねでジードも同じポーズをする。

「ガルバイル、ただ今戻りました」

階段を数段上がった椅子にアバル。
その右隣にヅェシテが立ち、左隣にはレンが椅子に腰掛けている。

「ついにここまで来た。あれがアバルか。……感情のねえ生き物みてえな冷たい目をしてやがる。あと、隣にいるのはさっき会ったあの女だ。やっぱり王女か?」

「あ、あれは!さっき会ったジード」

ジードとレンは互いを認識して、一瞬目が合った。

「そなたにはなかなか仕事をやれんで退屈であろう。だが隣のメディオ、ジールとの戦争も見据えている。牙を磨いておけ。して、隣の者は……ジードという者か?」

「はい。暗軍の新たなメンバーです。ジード!」

ガルバイルに誘導されたジードはやや前に出て膝まづく。

「ジードです。以後お見知りおきを」

「ガルバイルの眼に叶うとは、噂通り使える者なのだろう。その力、存分に発揮できる舞台を用意しよう」

挨拶を終え、二魔が王の間を出る。

「王の印象はどうだった?」

「なんか……冷たいっつうか、感情がないっつうか、あ、いや、別に悪く思ってんじゃなくて……」

「ふっ、お前の言う通りだよ。いつからかアバル様の目には温かさがなくなっちまった。……ちなみに、暗軍は仕事がなけりゃあ自由行動だ。首都の城にいようが咎められない。目をつけられないようにな」

「でも、ヅェシテと違って、アバル王は俺の入軍に反対ってわけじゃなさそうだな。むしろ受け入れてくれていたような」

「軍に関しては全てヅェシテの独断さ。俺にも、どこまでがアバル様の命で、どこまでがヅェシテの独断なのかわらん」

「あ……、あの王女さんは、なんていう?」

「王女?ああ、レンの事か。あのコは王女じゃなくて、客みたいなもんさ。籠の中の鳥……可哀想な鳥だ」
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