魔界動乱期
その後のケルベロスとの戦いで、黒い魔力を抑え込むように広がった白い光の魔力も、そう考えると合点がいくような気もした。

「漆黒のグリフォン……。何か知っているのだろうか」

ジードはグリフォンの地図を破ってポケットにしまい込み、書庫を出た。
セレナとレンの事が気になったが、魔神を抑え込むヒントを前にいてもたってもいられなくなったのである。

城を出ようとしたとき、一魔の魔族と出くわす。

「君がジードか。裏切り者のセレナと一緒にケルベロス退治をしたそうだな」

「あ?誰だあんた?」

その魔族の言葉に、ジードは燃え上がるような怒りを必死に抑えながら立ち止まる。

「俺は新たな第八師団長となるゾラ。しばらくはこの王都にいるからよろしくな」

ゾラは不敵な笑みを浮かべた。
表情や口調、そして感じられる魔力から、ジードは吐き気を覚えた。
一言で表すならば、醜悪。
ゾラの全てが狂気に満ちている。

「こいつの悪が見抜けねえのか、アバル王は……。いや、ヅェシテか」

ヅェシテが軍の選定の全権を握っているという事は、以前城の前で聞いた。
ゾラを師団長に選んだヅェシテの心が、ジードには全く理解出来ない。
それほどの悪を、ゾラは宿していたのだ。

「テメエが師団長?セレナどころか、ホルンよりも劣るように俺には感じるがな。狂気だけは大したもんだ」

ジードの言葉を受けたゾラが笑い声をあげる。

「狂気こそが強さを引き出すんだよ!ヅェシテ様は俺を選んだんだ。力を授けるに相応しい魔族としてな!」

「‘力’だと?」

「まあ今のうちに見下しておけ。後々お前は俺に見下されるんだからよ!」

どす黒いオーラを放ちながら歩き去るゾラ。
ゾラの自信に満ちた言葉はハッタリだとは思えない。
ジードの直感はそう判断していた。
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