魔界動乱期

そしてジードはゾラに、昨日の数倍の寒気を感じる。
見た目は間違いなくゾラだ。
だが、その質は明らかに別。
魔力の次元が違っていた。
更に、その瞳はヒューズのものではなく、魔獣の、蛇のような瞳に変わっていたのだ。

「てめえ……ゾラか？」

「くっくっく……」

「うぐぉっ！」

ゾラが笑みを浮かべた直後、ジードのみぞおちに鋭く突き上げるゾラの拳が突き刺さる。
その重く、速く、鋭い突きに、ジードの呼吸は奪われ膝をついた。

「言ったとおりだろ？俺が貴様を見下すってよお」

「て…めえ……、何があった？」

「選ばれし魔族なんだよ俺は。ゾーマの女……喰ってもよかったんだがな」

「ゾーマの女……？まさか、レンの事か？レンがゾーマ！？……うぐぅっ！」

ゾラは膝まづくジードの顎を蹴りあげ、吹き飛ばした。

「俺様は第八師団長ではなくなった。軍団長補佐。つまりはヅェシテ様の右腕ってわけだ！ジード、てめえは俺がこきつかってやる！せいぜいこの国のために尽くすんだな！ひゃーはっはっはっ！」

「あのやろう……言葉も表情も、全てが狂気に染まってやがる。ゾーマによって狂暴性も増したのか？」

そしてジードは仰向けに倒れながら、ガルバイルとレンの言葉を思い出していた。

‘籠の中の鳥。可哀想な鳥だ’

‘未来が、希望があってうらやましい’

「レンは……無理矢理その力を使用させられていたのか。おそらく何か弱味を握られて」