魔界動乱期

「な、何を言っている！」

ラウドは顔を真っ赤にして炎駒の言葉を掻き消した。

「わかりやすいんだよ、お前は。それにジードから聞いたぜ？妖狐は何百年も前にお前んちから借りた衣服をまだ着てるんだろ？わざわざバカでかい衣服をよ。あいつの宝物ってわけだ。わかるよな？いくら鈍感なお前でも」

「た、単純に着る服がなかったんだろう……」

「子供か！」

「そ、それに……、あいつと私は性質が違うからな。いや、元々はあいつは優しい魔族だった。しかし今は……」

「エリアでのあり方って事か？俺に言わせりゃあ、お前も妖狐も森の紳士淑女だぜ。妖狐は決して他のエリアを侵攻したりしないだろ？あくまで自分のエリアに侵入してきた者だけにしか危害を加えない。エリアを守るってのは、弱肉強食の魔獣の森じゃあ当たり前だ」

「むう……」

炎駒のあまりの正論にラウドは言葉をつぐんだ。

「要はあれだろ？自信がねえんだろ？お前が昔、魔界一の臆病者って言われてたわけがわかったぜ……」

炎駒が呆れ顔で空を見上げる。
そしてキッとラウドを見つめ、こう言い放った。

「お前が行かなきゃ、今から俺が妖狐呼んでくるぜ！」