魔界動乱期
そして妖狐のエリアに辿り着いたラウドは、小さな声で呼び掛ける。

「妖狐、いないか?いないなら仕方ないから帰るぞ……、うむ、いないな」

【いきなり来て、すぐ帰ろうとするとは、どんな意味がある?】

ラウドの魔力を、妖狐がわからないわけがない。
ラウドがエリアに入る前から、妖狐はその来訪を待っていたのである。

「う、うむ……実はな、ちょっと話があってな」

【童……ジードの事が気になるか?】

「い、いや、エリアのあり方についてだな」

この用件を妖狐は鼻で笑う。

【もっと面白い話を期待したぞ】

「妖狐よ、もう魔獣を殺すのはやめにしないか?」

ラウドは英雄とは思えないほど、おどおどしながら妖狐にうったえかける。

【ヌシからそんな事を言うとはな。もう我を許す気になったか?】

「許すもなにも、始めから恨んでなどいない!」
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