魔界動乱期
「何度も言っただろう?私はお前の手が血で染まる姿は見たくないと。今でもその思いは変わらない」

かつて妖狐は、ラウドに仇為す者を葬り去るためにそれまで貫いてきた生き方を変える決意をした。
殺さない心から、殺す心へと変える決意を。
そしてそれは、ラウドから愛する者を奪ってしまったときに確固たる不動のものへと変わる。

リマの雷獣ギドラスを消そうとしたとき、ラウドは叫んだ。

‘殺すな’と。

しかし妖狐は躊躇なくギドラスを消し去った。
それはラウドの心を裏切った結果であり、ラウドのための不動の志を貫く行為でもあったのだ。

もう自分はラウドに会う事は一生ないと思ったがゆえの、ラウドのへ裏切り行為。
それはラウドに対する不器用な愛情であった。

しかし今の妖狐の志は宙に浮いている。
エリアに入ってきた魔獣を殺す事は、不動の志を貫くための自分への罰だと考えていたが、今、妖狐はラウドと再会してしまっているのだ。

そしてその不動の志は、ラウドを裏切り続け、ラウドに苦しみを与えているのではないか。
妖狐は自分の行動が正しいのかどうか、判断がつかなくなっていた。
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