魔界動乱期
しばらく後、禁断のエリアへ小さな侵入者が迷いこんでくる。

【ホワイトベアの赤子か】

ホワイトベアは、先のアバルとの戦いで雷獣ガイラに一瞬で全滅させられた森の暴れ熊である。
この赤子は、魔力を発していなかったのでガイラの的にならずに済んだのだ。
だが、保存してあった食糧が底をつき、フラフラとこの場所へと辿り着いた。
すると赤子は妖狐の足にもたれかかってスヤスヤと眠りにつく。

【我になつくか。こんな事は初めてだな。戦う気を発していないからか……】

それから三日ほど経ち、妖狐はまったく相手にしていなかったが、赤子はよくなついた。
さかし赤子は明らかに痩せ細り、動き回ることもなく妖狐にもたれ横たわる時間が増えていた。

妖狐はそんな赤子をビッとひっぺがし、自身はスタスタとエリアを出ていってしまう。
赤子はもはや体を起こすことも出来ず、悲しそうな目をして妖狐の後ろ姿を見ていた。
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