魔界動乱期
翌日、再び昨日のハイエナが禁断のエリアを訪れた。

【またヌシか。二度は言わぬぞ……】

「あ、あの……昨日は見逃して頂いて何とお礼を言ったら良いか。な、なぜ、俺を見逃してくれたのですか？」

妖狐は質問には答えず、ハイエナの方も見ずに無関心で座っている。

「戦えない理由でもあるのですか？だとしたら、あなたはここを出るべきです。いくら妖狐さんとは言え、戦えなければこの森は危険だ」

【我を襲おうとする魔獣がどこにいる？】

立ち去ろうとしないハイエナを面倒に思った妖狐は、静かにハイエナを威嚇する。
手を出さないのは、ラウドとの約束を守るためだ。
もう自分は、ラウドを裏切る行為はしない。

「ひっ！で、でも……実際に俺は攻撃されてませんし……」

それでも妖狐はハイエナを睨み付けたまま、動く気配はない。

「や、やっぱり……。これは、名を売るチャンスだぜ！」

ハイエナは攻撃されない事に確信を持ち、恐る恐る妖狐へと近付く。

「襲われないとは限りませんよ。例えば、森で最弱のハイエナが、こんな事をするかもしれないんだぜ！」

ハイエナはその鋭い爪で、妖狐の頬を引き裂いた。
しかし妖狐は無表情のまま、何事もなかったかのように静けさを保っている。
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表紙・目次

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