魔界動乱期
しばらくの間、ハイエナの一方的な暴力が振るわれた。
最弱のハイエナは、一度暴走し出すと収まりがつかず、自分が殴り疲れたところで手を止める。

「あの妖狐を、俺が一方的に殴りつけてる!おい!明日も寄らせてもらわあ!」

いくら妖狐でも、無抵抗で殴り続けられればダメージが溜まる。
しかし妖狐はその場を動かず、無表情のままその暴力を受け入れていた。
それからしばらくの間ハイエナの暴走は続く。

「しかし妖狐のやろう、全く反応しやがらねえ。ちょっと飽きてきたな。……そうだ、いい考えがあるぜ。妖狐のひきつる顔が拝めるかなあ。あいつの悲鳴も聞きてえしよ……」

そしてハイエナは妖狐のエリアへ到着する。
妖狐は連日のリンチで全身に傷を負い、しかし痛みに顔を歪めることなく平然と座っている。

「妖狐さんよお、今日は仲間も連れてきたぜ。痛みじゃあ、おめえの悲鳴は聞けないらしい。なら、こういうのはどうだ!?」

ハイエナは体当たりをして、妖狐を地べたに寝かせる。

「考えてみりゃあ、‘魔界一の美女’が無抵抗でいるんだ。こりゃあ、仲間と共に楽しむしかねえよな……」

その頃、高台にルークが颯爽と現れる。

「おい、ラウド!」

ルークの姿を見たラウドは、及び腰になり後ずさった。

「な、なんだルーク!もう全部話しただろう!」

「その事はいい!妖狐が戦わなくなったってのは本当なんだな!?」

「あ、ああ。あいつはそう言っていたが、どこまで本気か……」

「どこまでどころか、森で最弱のハイエナに一方的にリンチされてるらしいぞ!」

ルークの言葉を聞いたラウドの表情が一変する。

「しかも、さっき俺の仲間が聞いた話によるとなあ……」

「なんだと!?あのバカ……!」
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