魔界動乱期
ラウドは、一瞬膨れ上がった、殺気をはらんだ魔力を感じ取る。

「妖狐の魔力?……一体何があった!?」

ラウドが急いで妖狐のエリアに駆け付けると、そこには妖狐の姿はなく、無惨なホワイトベアの赤子の死骸が転がっていた。

「これは妖狐になついていたというホワイトベアの赤子か!?ひどい……。一体誰が。……まさか!?」

そして少し先には、立派な衣服が脱ぎ捨てられているのを、ラウドは発見する。

「これは、この前妖狐にやった私の服。妖狐……!」

ラウドはハイエナのエリアへと急いだ。
そして、到着したラウドが見たものは、数十魔のハイエナの死体と、真ん中に座り込む妖狐の後ろ姿。
鮮血に染まった白装束は、まるで血の涙を流しているかのようだ。

「妖狐……」

妖狐は振り向かずに、ラウドの声に反応する。

【ラウドか。約束を破ってしまったな。やはり我は我のままだ……】

やや上を見上げながらそう言った妖狐の背中からは、悲しみの感情が伝わってくる。

「いや、お前は変わったよ」
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