魔界動乱期
【‘わたし'は、極限に弱くなるぞ。それでも守れるか?】

「その分、私が強くなるから大丈夫だ」

ラウドの体には、少しだけ肩を震わせる妖狐の振動が伝わってくる。

【ラウド、‘感情のある者'とは、その気持ちを自由に出して良いんだな?】

「ああ、そうだ」

【喜びも、悲しみも、怒りも……】

「ああ」

その返答を聞いた妖狐は、しばらく間を置いてからラウドに問い掛ける。

【では、愛するということも……?】

「……ああ」

ラウドは妖狐を抱き締めながら、返事をした。

【ラウド……‘わたし'は‘あなた'を……】

ラウドの頬と妖狐の頬が重なり、妖狐はどこを見るでもなく、宙に視線を注いでいる。

【愛している】

「私もお前を愛しているよ。ずっとな」

妖狐の両目から涙がこぼれだした。一粒、二粒。

この日から、妖狐のエリアは高台の麓に位置することになる。
ラウドがいつでも妖狐を守れるように……。
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