魔界動乱期
レンは潔い程に真っ直ぐな魔族である。
自分をこんな立場に追い込んだアバルは許せないが、怪我で運び込まれてくるアバル兵までを恨みの対象とはしていない。
彼らは悪ではなく、彼らをまとめるトップが悪なのだ。
その事をレンは理解しており、その考え方はジードと似ている。

レンがジードに心の叫びを打ち明けたのも、なにもロイドに雰囲気が似ていたからというだけではない。
ジードに自分と同じ何かを感じたからであった。

「ジード……早く会いたい」

そして時刻は夜中の一時。
城内監視室には、アバル城内外に設置されている粒子モニターの映像が多数のスクリーンに映し出されている。
そこに監視兵が三魔常駐して、常に目を光らせる。

「ん?ジード?」

ふと、城に入るジードの姿が映る。
そのままジードは監視室へと向かってきているようだ。
そして監視室のドアがノックされた。

「ジードさん、ここには暗軍と言えど入れない事になってるんだ。悪いが……」

「何を見ていた!?城内に何者かが侵入したぞ!このまま発見出来ずに何かあっては監視兵の責任は重大だ。俺にモニターを見せてみろ。場所は大体わかってる」

「え!?そんな……いや」

監視兵には、厳重な警備に侵入者など入れるわけがない、という油断があった。
モニターの数は二十以上。
見逃している可能性もある。
更に監視兵は‘責任’という言葉が重くのしかかり、ジードの立ち入りを許す。

「侵入者はここだよ」

「うっ!」「ぐあっ!」「ぐっ!」

ジードはあっという間に監視兵三魔を気絶させた。
そして念交信でレンと交信を始める。

「よし!レン、出られるか?」
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