魔界動乱期
時間が止まったかのように固まるリョーザ。

「……どうした?憎めないんだろ?」

「憎む!!」

「………。」

そしてリョーザは外へ体を向け、グッと膝を踏ん張った。
しかしまたもや、リョーザはそのまま動かずにしばらく時間が経過する。

「こ、今度は何だ……?」

やや呆れたような顔付きでガルバイルが訊ねると、リョーザはバッと振り向き、体を震わせる。

「俺、飛べねーし!!」

「…………。」

その場にいたアバル兵全てが沈黙した。


その頃ゲーハルトでは昼夜攻め続けたアバル軍が、三つの拠点全てで城落としの攻防に突入していた。
しかしそのとき、アバル軍緊急指令室からヅェシテに交信が入る。

「なんだと!?ジードがゾーマを……?ちっ、もう少しでゲーハルトが落ちようというときに!」

交信の内容は緊急帰還であった。
ヅェシテはゾラとエドガーに交信を入れ、指示を出す。

「私とゾラの軍は帰還。エドガー軍は引き続きゲーハルトを攻め落とせ。落としやすいようにしておく」

そしてヅェシテが力を解放すると、黒い魔力がグワッと放出される。
更にヅェシテは剣を両手で握りしめ、気合い一閃振り抜くと、黒い剣戟(けんげき)がゲーハルト城に向かっていった。
その剣戟は斜めに伸び、城に届いたとき。

バガッ!!

「うおっ!城が!!」

遠く離れた場所にある城が、斜め横に二つに割れたのである。
そして上半分の城がズズズ…と崩れ始め、やがて轟音をあげて地面に落ちた。
しかし、真っ二つに割れたのは城だけではない。

「リュンベルグ様!軍団長のリュンベルグ様が……!」

ヅェシテの狙いは城ではなく、ゲーハルトの軍団長だったのである。

「後は任せたぞエドガー」
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