魔界動乱期
エドガーは最も早く拠点の城落としを果たし、ヅェシテからの交信を城の玉座で悠々と聞いていた。
玉座のある大広間にはおびただしい数のゲーハルト兵の死体。
エドガー以外のアバル兵は、城から逃げ出てくるゲーハルト兵の殲滅作戦を敢行している。
エドガーはたった一魔で城に入り、ゲーハルトの主力を倒したのだ。

「アバルの科学力を結集し、ゾーマによって力も引き出された私こそが、アバル最強の魔族だ。……そうは思わんか？」

エドガーは、大広間のドアの方向へ話しかけるように言葉を発した。
すると、そのドアがギギィ…と開く。
外から入ってきたのは、黒装束に全身を包んだ魔族。

「ゲーハルト攻略は以前からのアバルの命題だったからな。どこかで姿を現すと思っていた。貴様は隙を衝いたと思っているかもしれんがそれは違う」

エドガーの言葉を黙って聞いているその魔族が、黒装束を脱ぎ捨てる。

「貴様は炙り出されたのだ。アバルの闇……セレナよ！」

その魔族はセレナ。
復讐に燃える闇の歴史は、エドガーを討つためにゲーハルトへと入り込んでいた。
黒く染まった左目がエドガーを睨む。

「随分と余裕だな、第一師団副師団長様は」

「くっくっく……。言ったとおりだよ。今の私はアバル最強。私の体を使った研究成果はヅェシテ将軍も知らない」

エドガーがそう言って鎧を脱ぎ捨てる。
セレナは怒りの形相でエドガーの体を一瞥した。
それは多くの魔族を重ね合わせたような異形の体であった。

「その体はキメラ……？それが、多くの魔族を犠牲にした成果か。ホルンも……薄汚い貴様の一部になったと知ったら報われん。この世から消えてもらうぞ！」
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