魔界動乱期
セレナが剣を構えると同時に、巨大な炎の魔法を放った。
しかしエドガーも氷の魔法で相殺しつつ、何本もの巨木を生み出しセレナを襲う。

「ではそのホルンの能力で串刺しにされるがいい！」

「むっ！？」

何本もの巨木の幹がセレナに巻き付き、体の自由をうばう。
更に鋭い巨木の爪がセレナの心臓目掛けて一直線に伸びた。

「あっけない幕切れだな！……何？」

巨木がセレナに突き刺さる直前、その動きがピタリと止まり、セレナを拘束していた幹もシュルル…と外れた。

「エルフは元は自然の精霊だ。木の扱いで私を勝るはずはなかろう」

その光景を見たエドガーは、それでも余裕の笑みを浮かべている。

「ダークエルフならばこれぐらいやるだろう。だがな、キメラにはもうひとつの成長がある」

「成長？」

「それがこの、細胞同調だ……」

細胞同調。
それはかつてディナスが、ジードとの激しい戦いにおいて為した奇跡とも言える細胞の一体化である。
エドガーの細胞は急速に動きだし、元のエドガーの体へと変化を遂げる。
それはキメラの力が元に戻ったという劣化ではない。
圧倒的な進化。

エドガーの体が少し揺れたとセレナが認識したとき、既に腹部にはエドガーの拳がめり込んでいた。

「うっ…ぐぅ！」

更にエドガーが、宙に舞うセレナに向けて氷の魔法を放つと、セレナの体は天井に張り付けられたままピキピキと凍り付く。
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表紙・目次

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