魔界動乱期
エドガーの凶刃がセレナの首元を貫く直前、エドガーの動きがピタリと止まった。

「え?」

「ウググ……なぜ…動かナイ!」

そして夢か現実か、セレナの前には透き通る体のホルンが現れたのだ。

‘魂は意志に宿る。ギルシャスの英雄の言葉です。肉体は死すとも、意志があればそこに魂はある。セレナ様……最後に役に立てた’

「ホルン?……ホルンなのか!?」

キメラと化したエドガーに取り込まれたホルンの細胞が、細胞同調にも反発してエドガーの動きを止めていた。

‘少ししか持ちません。早く!’

「ホルン……わかった!」

セレナはヨロヨロと歩き出す。
一歩、二歩と進んだところで、剣をエドガーの胸に合わせて倒れ込んだ。

「これは……ホルンの意志の力だ!今度こそ朽ちろ!」

照準は少しずれたものの、セレナの剣はエドガーの右胸を貫いた。
それは偶然だが、ゾーマのコアの破壊に至る。

「ウグッ……!グアアァァァァ!!」

セレナ共々仰向けになって倒れたエドガーの体から、ドス黒い障気が溢れ出し、部屋中に充満する。
やがてそれは破壊された壁から外へと消えていった。

「エドガーは……?……!?」

エドガーは、生気を吸いとられたように干からびて絶命していた。

「ホルン…敵はとったぞ」

そしてセレナはうつ伏せになり、そのまま意識が遠のく。

「私も、後から来るアバル軍に殺されてしまうだろうがな……。生まれてから差別によって魔族を憎み、そして最期も魔族に恨みを晴らして死んでゆく。私にはお似合いの…末路だ……」
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