魔界動乱期
セレナが完全に意識を失ったとき、城の天井から一魔の魔族が着地した。

「七ゼモルの領地の国にしては、えらく広くて頑丈な城だな」

そしてその魔族は気絶しているセレナへと近付く。

「珍しいもんが拝めたよ。ゾーマの暴走に、なんとそれを止めちまった両目開眼のダークエルフか。もっとも、ゾーマは完全に力を暴走させるまでには至ってなかったようだがな」

謎の魔族がセレナの心臓の鼓動を確認する。

「よし、まだ生きてる。このカワイコちゃんはお持ち帰りしてゾーマについて聞いてみるか。さて、今は皆散り散りだから、一度全員招集だな」

そして謎の魔族が風を発生させると、セレナも浮き上がる。

「ラウドとの再会はまたの機会だ……」


その頃、アバルでは夜中の緊急会議が開かれていた。
ヅェシテを始めとする第一師団から四師団の師団長と副師団長、そしてガルバイル。
ゾラの姿はない。

「ガルバイル!貴様が引き入れたジードはとんでもない魔族だったな!どう責任を取るつもりだ!」

怒り狂っているのはゲーハルトから戻ったばかりのヅェシテである。

「あいつの戻る場所はわかっている。俺が直々にジードを倒してレンを連れて帰るさ。じゃあ、俺は行くぞ」

「待てガルバイル!まだ会議は終わっていない!」

ヅェシテの制止を、ガルバイルは後ろ姿で手を上げて会議室を出ていった。

「アバル様、これはもはや重大な責任問題です。少しお耳を……」

「ふむ……仕方ない」

そして会議は終わり、会議室を出るヅェシテの顔は歪んだ笑みに満ちていた。

「くっくっく……。実際はもうゾーマなど用済みだ。邪魔者を排除する良い理由が出来たに過ぎん。そして、私の支配する国が完成するのさ……」

アバルに根付いた闇。
それはこの軍団長のヅェシテに他ならない。
卓越した力と、全てを掌握する謀略でアバルという国を意のままに動かすヅェシテ。
そして傍らに佇むゾラは、ヅェシテを上回る狂気を、ガルバイルに向けていた。
< 412 / 432 >

この作品をシェア

pagetop