魔界動乱期
ジードの返答に、その場にいたゾーマ全員がオロオロと落ち着かない態度をとりながら索冥を見ると、索冥は愉快そうに笑い声をあげた。

「ははは、自分が知られているなどと思う事はただの驕り。ジード君の反応が普通でしょう」

「そ、そうかしら。ずっと里にいたあたしでも四麒麟は知ってたけど……」

炎駒が熱情の中に優しさを持つ魔族なら、この索冥は全てが穏やかな雰囲気を持つ魔族であった。

「ぷはっ、なるほど。能力だけじゃなく中身も雲か」

ジードが思わず吹き出すと、ゼロルドは慌ててしまう。
グレイドのフロティアの大幹部、索冥がわざわざ迎えに来てくれたのに対して、失礼な態度と思ったからだ。

「いいんですよ。どうやらジード君は魔族の本質を見抜く力があるようだ」

「ど、どういう事じゃ?」

「ゼロルドさん、この索冥って魔族はさ、呑気で気楽さを持った、とてつもなく優しい魔族って事さ。おおらかって言うのかな?」

「そ、それがなぜ雲じゃと?」

「風の吹くまま、自由に呑気に空を飛び回る雲みたいだろ?」

ジードは索冥の魔力から、そのおおらかさを感じたのである。

「さて、食料を探しに行くようだが、私の雲に乗って城へ来れば大量のご馳走を用意するが。少しだけ空腹を我慢できるかい?」

「ご、ご馳走を!?そりゃもちろん……、あ、皆、どうだい?」

ご馳走という言葉に反応して先走った答えを言おうとしたジードは、悪びれたように皆に訊ねた。

「体力も魔力も消耗してるのはジード殿じゃ。我々が我慢できないはずはない。ジード殿がよろしければ、それに従うまで」
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