魔界動乱期
レンはセレナという魔族がアバル軍に在籍していて、今は追われる立場である事を知らない。
アバル中に大々的な放送もされたが、それまでアバルの話題を独占したジードの事も知らなかったレンが知るはずもなかったのだ。
ましてや、セレナは第八師団長の後釜で据え付いたがゆえ、ゾーマも受けていない。

「そうだよね。ジード程の魔族に、相手がいないわけないか……」

しばらく進むと雲が下降し始め、眼下に巨大な城が見えた。

「すごい!アバル城とは比べ物にならないくらい巨大な城だわ」

「皆さん、着きましたよ。このまま城へ入ります」

三十魔以上の魔族を乗せた大きな雲が、城の中階から直接城内へと入る。
そして索冥は雲を解いた。

「今日はもう遅い。疲れたでしょうからまずはお休みください」

「い、いや!まずは王にご挨拶をせねば!ジード殿、着きましたぞ。礼を欠いては……」

「いやいや、王の星牙からもまずは皆様を休ませるようにと指示を受けています。しっかり休んで頂かないと私がお叱りを受けてしまうので」

焦るゼロルドを、索冥がそう言ってたしなめる。
わざわざ迎えに来てくれた索冥から‘お叱りを受ける’とまで言われては言うことを聞くしかない。
そうしなければ逆に礼を欠く行為になってしまうからだ。

これは、疲れきったジード達を見た索冥が皆を気遣って言った機転であった。
しかし王の星牙なら、そう言うに違いないと言う事をわかっていたのも事実である。
そしてゾーマ達はそれぞれ城兵に案内されて、宿泊部屋へと入っていった。
そこでたっぷりと睡眠をとったジードとゾーマ達は、翌朝まずは大広間へ案内される。
そこに待っていたのは、索冥ともう一魔。

「昨夜はよく眠れましたか?皆様の事は炎駒、そしてこの索冥から聞いております」
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