魔界動乱期
あらかたの食事を終えたところで、星牙はジードに興味津々に話しかける。

「ジード君は魔獣の森で生まれ育ったんだってね。炎駒とは長いのかい？」

「え、魔獣の森！？それって、アバルが攻め入った、あの森の事！？」

その事実にレンが驚きとともにジードを見た。

「ああ、話してなかったっけ？俺は魔獣の森からアバルに潜入したんだ。炎駒さんとは知り合って間もないけど、なんだか色々相談にのってもらったんだ」

「そうだったか。炎駒は君の事を大切な友だと言っていた。魔獣の森は炎駒にとっては安らぎの場所のようだね。友にも恵まれていると、君を見てわかる」

「炎駒さんが、俺の事を？まあ、親父とかと今は打ち解けてるみたいだし、その息子だからかな？」

「父上？魔獣の森には君以外にもヒューズがいるのかい？」

「ああ、違う違う。育ての親って事さ。親父の名前は……」

この後ジードから出る言葉に、その場にいた全員が驚愕する事になる。

「ラウドだよ。知ってる？結構有名らしいんだけど」

「ラウド！？」

皆の声が同時に放たれた。
それも当然で、ラウドの名声の大きさを知らないのは息子のジードのみであったからである。

「え？やっぱり……有名なんだな、親父って」

「そりゃそうさ……。我々フロティアがまだ小さなゼモルだった頃、ラウドさんの勇名はこの大陸まで知れわたっていたからね。君は知ってるかい？ラウドさんが‘最強魔族’と呼ばれていた事を」

「な、なんか……誰かが、言ってた気がする。あれ、本当なの？」

ラウドを比喩する言葉‘ギルシャスの英雄’や‘最強魔族’という言葉はジードも耳にした事はある。
しかしその存在があまりにも身近だったせいか、ジードはその文言を、何か現実味のない言葉として心の奥でとらえていた。

「なんか、全然知らない魔族達からそういうのを聞くと……親父ってやっぱすげえんだな。そうだよな。俺、全然歯が立たねえんだもんな親父にさ」

「ジード！お父さんは本当にあのラウドなの！？あのギルシャスの英雄！？ロイドさんと戦ったあの……」
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