魔界動乱期
その事実はレンにも衝撃を与えた。
自分の兄が仕えているロジの王の宿敵となったラウド。
その息子が、自分が淡い想いを抱いているジードであった事に。

「ああ、そうそう。八十年戦争ってやつだよな。親父は言ってたよ。ロイドって魔族は、尊敬に値する魔族だってさ。負けた相手にそう思わせるんだから、ロイドってのも会ってみたいよ」

「お父さんやジードは、ロイドさんの事を憎んでないの?だって、自国を滅ぼした敵でしょ?」

「うーん……、親父は今楽しそうに暮らしてるし、憎んでないと思うな。俺だって別に戦ったわけじゃないし、過去の事だろ?」

その言葉で、レンや皆にはラウドという魔族の奥深さが理解出来た。
普通ならば息子であるジードは、親を追い込んだロイドに対して、何かしらの負の感情を持つであろう。
しかしジードはからはそんな感情を一切感じない。
そらは紛れもなく、親であるラウドの教育の賜物である。
固定観念を植え付ける事なく、正しい判断が出来るように、愛情を持ってジードを育てたに違いない。
皆、そう感じていた。
そしてジードはラウドの心を受け継ぎ、強さと優しさを備えた魔族としてゾーマ達を救いだしたのだ。

「会ってみたいな、ラウドさんに」

「星牙さん、今度魔獣の森に来なよ。あ、でもアバルの領地にフロティアの王が入るわけにはいかないか」

「機会があれば行くさ」

「あ、それとさ。炎駒さんの事で気になった事があるんだ」

「なんだい?」

「炎駒さんは心の奥底に深い傷を負っているのを感じた。それって、フロティアを抜けた事と関係してるんだろ?聞いたら教えてくれるのかな?」

そこで、少しの沈黙が流れる。
星牙も索冥も、炎駒の事は一日たりとも忘れた事はない。
それは、炎駒に傷を負わせた責任を四麒麟の仲間は特に感じているからであった。

「昔、我々はね。守るための戦いを強いられていたんだ。麒麟は平和を好む魔獣。そのなかでも、水黎(すいれい)は特に争いを嫌った……」
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