魔界動乱期
その言葉を聞いた炎駒は、驚きの表情とともに水黎に歩み寄る。

「一魔でだと!?あの国々には俺達でも手こずる魔族がかなりいるんだぞ!なんで止めなかったんだ!」

水黎は目を瞑り、微笑みを浮かべた。

「信じてるからさ」

「信じてる……?」

「魔界で最も小さなゼモルの王は、魔界で最も強く、全てを引き込む温かさを持っている、てね。たとえ戦いになっても星牙が負けるはずがない。いや、それ以前にきっと戦いにはならないさ」

水黎の言葉通り、この後星牙はそれぞれの王を説得し、数十年続いた彼らの戦争を休止させる事に成功する。

戦争を繰り返していたカメリア、ドゴル、ミズーリの三国同盟という形で。
さらにその仲裁に入ったフロティアが審判国として、何か問題が起きたときに彼らを裁く判断をする機能を果たす事となった。
そして、フロティアを含めた首脳会談を何度も開いているうちに、歴史は大きく動くことになる。

「今日集まってもらったのは他でもない」

この日、カメリア王が緊急会談と称して皆に召集をかけた。
カメリア王の他にもカメリア軍団長、ドゴルの王と同国軍団長、ミズーリ王と同国軍団長、そしてフロティアの星牙と炎駒、青麒麟の青據(しょうこ)が終結する、かつてない程の会談である。
話を切り出したのは、皆を集結させ議長を務めるカメリア。

「星牙、あなたが我々を説得に来て、そして何度も会談を行っているうちに我々はあなたの偉大さをあらためて思い知らされた。最初は認めたくなかったが、私は今では思っている。格が違う、とな」

カメリア王の話に他の国の王や軍団長も頷いている。

「だからあなたには悪いと思ったのだが、先日我々三国だけで集まり、一つの結論を出すに至った」

「一つの結論を?」

星牙は、自分の知らない会談の事を気にかけながらもその結論を訊ねる。

「我々三国は、今日この場で消滅する」

星牙、炎駒、青據ともに言葉を失う。
まだカメリアの真意がわかりかねているようだった。

「我々はな、あなたがたと同じ‘開拓者’になろうという意味だ」

「そ、それは……」

「三国合わせて百三十七ゼモル。皆、フロティアに降る!話は以上だ」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!私はそんな事を望んでは……」
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