魔界動乱期
いきり立つ炎駒を、水黎がなだめる。

「待て炎駒。お前が行けば本格的にリュウソウと抗争が起きる可能性がある。ここは僕が行って説得してこよう」

「兄貴!あいつは話が通じる相手じゃねえ!下手すりゃ兄貴にも手を出し兼ねない。俺も行くぜ!」

「お前が行ったら誰が王都を守るんだ?それこそ星牙を裏切る行為になるよ?」

「くっ……、でも兄貴!一魔で行くのは危険だ!せめて四麒麟の誰かを……」

「身内で危険な事なんかないさ。僕は炎駒のように短気じゃないからね。大丈夫さ」

水黎はにこやかに微笑んで、その場を去っていった。
そして水黎は、第七師団の主力が集まった城へと足を踏み入れる。

「水黎か。俺の行った武力行使を罰しに来たのか?」

玉座には、多くの主力に囲まれながらリュウソウが座っている。

「罰しに来たんじゃない。君を止めに来たんだ。こんなことをしていては、君の居場所はどこにもなくなる。僕達は仲間だろう?なんで何も相談してくれなかったんだ?」

水黎の言葉を聞いたリュウソウは、フッと鼻で笑い、水黎を見下ろす。

「力のない平和に意味はない。お前たちは思想を掲げるだけだ。それでは何も動きはしないぞ。だから俺が動いた」

「今は国の統治に時間をかけるべきときだからだ。現段階でこれ以上領土を広げては、国がバラバラになる。君にはその事をわかってほしいんだ」

リュウソウはスッと立ち上がり、ゆっくりと、水黎に近づいた。
そしてその強大な魔力を解き放つ。

「リュウソウ!僕は戦いに来たんじゃない!仲間同士で争うなんて……」

「聞き飽きた。俺を止めたいなら力で止めてみろ。四麒麟の影に隠れた実力者、水黎の力でな」

この魔力解放を、炎駒はすぐに、感じとった。
そしてそれはリュウソウと水黎が対峙している事を知っている炎駒にとって、最悪の事態だと理解する。

「兄貴!兄貴はきっと手を出さない!間に合えよ!」

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