魔界動乱期
「アバルが俺を造り出したせいで、ヤツらは最大の脅威を生み出しちまったのさ!」

「お前が最大の脅威?ふっ、笑わせる。俺は少なくともお前よりはこの森に住む魔獣を知っている。ヤツらは強さに真摯だ。ヤツらは森を愛している。憎悪が愛に勝てたら相手をしてやる」

そう言い残し、炎駒は自らのエリアを去っていった。

「愛だと?そんな生温いモノは俺が潰してやる!圧倒的な力こそが全てを支配する様を見ているがいい!」

更なる憎悪を纏ったディナスは、この後ますます‘キメラの力’を強めていく事になる。

それから二週間後、イグニ派の猛獣種・タイガーのエリアで開戦の狼煙が上がる。

「ぐあっ!」「ガボッ」「むぐぐぅ!」

戦闘力では森でも強者のタイガー達が、たった一魔の魔獣に次々と倒されて行く。

「くっくっく、儂の相手になるヤツはおらんか?」

新たにディナス軍に加わったモルキの襲来。ジード達を相手どったときのような、遊びや油断は一切ない。

「では、俺が相手をしてやろうか」

圧倒的なモルキの前に、一魔のタイガーが立ち塞がる。

「むっ、なぜ貴様が!?貴様のエリアはここではないじゃろう!」

「ふっ、同族のよしみだ」

そのタイガーは真っ白な毛並みに全身包まれた、魔界で唯一のホワイトタイガー。四神獣を祖に持つ森の強者‘白虎’が戦場に降り立った。
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