魔界動乱期
ラウドは高台であぐらをかき、眼下に広がる森を眺めていた。

「ロジとの戦争に敗れ、この森に辿り着いて百年か。この景色も見慣れたな」

ふと、一陣の風が吹く。
そして風に乗って一魔の魔獣がラウドのもとに舞い降りた。

「森の王が何、感傷的になってんだ？」

「ルークか」

ルークと呼ばれた風を操るこの魔獣は、銀色の美しい毛並を持った、隻眼のウルフ。
魔獣の森で最大勢力を誇るウルフ集団のボスであった。

「この森に来た当初の、戦いに明け暮れてた日々でも思い出してたのか？」

ルークの言葉を受けたラウドは、静かに目を閉じる。

「あの頃の私は生きる希望すら見失ってたからな。戦う事は望んでいなかったが、反面、それは当時の‘喪失感’を薄めてくれた」

全てを失いこの森に辿り着いたラウドは、森で最初に出会ったのがこのルークだった。
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表紙・目次

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