魔界動乱期
「ちょこまかと……!」

「ここだ!」

飛び回っていたアーヴァンクは、狙いをすまし、ギガンテスの真横から飛びかかった。
その軌道は、ギガンテスの顔の側部。
耳の穴へと向かう。

「耳の穴から脳をぶち破ってやる!」

ギガンテスの視線は前を向いたままだ。
アーヴァンクの爪が、ギガンテスの鼓膜に触れる。

ガッ!

「ぐああぁっ!!」

苦痛の悲鳴を上げたのは、アーヴァンク……。

「ごくろうさん」

ギガンテスはわざと隙をつくり、アーヴァンクが飛び込んで来るのを冷静に待っていたのだ。
そしてその巨大な手で、アーヴァンクを鷲掴みにした。

「あぐっぅ!」

ギガンテスの巨大な手が万力と化し、アーヴァンクを締め上げる。

‘ヒートブレス!’

ボォッ!

「ぐおおっ!」

そのとき、高熱度の息吹がギガンテスの顔に吹き付けられた。
それを吸い込んだギガンテスは咳き込み、アーヴァンクを締め上げていた手の力が弛む。

「今だ!」

アーヴァンクが万力から脱出して空を見上げると、そこには空を雄々しく駆ける、一魔の魔獣がいた。

「お前は……イグニの、セラト!」

劣勢に立たされていたイグニ軍の逆襲が始まる。
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