魔界動乱期

「セラトォ！」

怒りのこもったギガンテスの拳が何度も空を切る。
セラトはヒートブレスや風の魔法カマイタチでフェイントをかけながら、機を伺っている。

すると、ギガンテスの拳がセラトの体をかすめる。風圧でやや外に膨らむセラト。

「まずいぞ、タイミングが合ってきている。……あっ、セラト！！」

アーヴァンクが叫んだのは、セラトの飛行軌道上にギガンテスの右拳が放たれたからだった。
獲物を捉える確信からか、その拳は今までで最高の唸りを上げて繰り出される。

「これを待っていた！」

瞬間セラトは体を沈め、がら空きの右側へと回り込む。
後は‘信じる意志’を持ってギガンテスの右目へと狙いをつけて一直線に突き進んだ。

ギガンテスは、決してその怪力や強靭な肉体だけが武器の魔獣ではない。
荒々しく粗暴な戦いぶりに隠れがちだが、冷静に戦略を積み上げて戦うタイプである。