魔界動乱期
「恐るべき、神速のウルフ……。しかし、狙いがわかっていれば大したことはない」

喉元を噛み千切られたはずのバジリスクは、絶命せずに言葉を口にする。

「私は自分の体の一部も石化して硬質化できる。ただの石じゃない、魔力を纏った、鋼以上の強度を持つ石だ。さて、そんな私に噛みついた君の牙はどうなっているのかな?とても良い音がしたけど」

バジリスクが笑みを浮かべながら体を翻す。

「どれ、君の牙は……ん?何をくわえている?」

ルークは灰色の、拳大の塊を口にくわえていた。
そしてそれをプッと吐き出す。

「オメエ、禁断のエリアに行くとかぬかしてたな」

「う……あ、あれは……私の……!?」

「言いたかねえが、あっちは正真正銘の化物だ。オメエ程度じゃ、恐怖で逃げ出すのがオチだろうよ」

ルークはそう言い残し、バジリスクに背を向けて歩き出す。

「あれは……私の、肉体……」

ルークがくわえていたのは、石化したバジリスクの喉元であった。
バキボキという音は、ルークの牙がバジリスクの石化した肉体を噛み砕く音だったのだ。

ルークが最も力を発揮するのは、仲間のために戦うとき。
バジリスクは、触れてはならない扉に手をかけてしまった。
森の最強軍団のボス、ルークの怒りに。
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