魔界動乱期
その頃、一魔の魔獣が静かに歩を進めていた。

「さて、メインディッシュの前に準備運動でもしなくちゃな」

ヌーのエリアでは、頭領のカトブレパスが、間もなくやってくるであろう凶兆に気付いていた。

「カトブレパス様!ディ、ディナスが来ました!」

見張りのヌーから最悪の報告が届く。

「ち、父上!」

「うむ。ワシが行こう。ラルーよ、お前はまだ若い。だがいずれ‘カトブレパス’の名を継ぐ力と器が備わってきている。ふふ、ジードくんのおかげかな」

‘カトブレパス’とは、代々ヌーの頭領が引き継ぐ名である。
ヌーは高い魔力を備えた種族で、現在のカトブレパスは森に勇名を轟かす強者だ。

ディナスの姿が見えると、カトブレパスは一直線に突進する。
そしてスピードに乗り、その重たい頭をディナスにぶつけた。

「うおっ!」

はるか先まで吹き飛ばされるディナス。
カトブレパスは勢いのままジャンプして、ディナスを踏み潰しにかかる。

「おおっと!」

身をよじってかわし、ディナスは立ち上がった。

「我が一族に手出しはさせん」

「ヌーってのは魔力だけの魔獣って聞いてたが、パワーも一流じゃねえか」
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