魔界動乱期
カトブレパスは二本の角から極細の光線のようなものを出す。
そしてそれがぶつかり合いバチバチと音を立てる。

「あれは……」

「我がエリアに訪れた事を後悔するがいい」

そこから予測不能の動きで、いくつもの稲妻がディナスに向けて放たれた。
激しい落雷の轟音が辺りに響く。

「雷光。これだけの雷を生み出す事の出来る魔獣は、この森では私とラウド氏だけだ」

ブスブスと焼け焦げた臭い。
大量の噴煙から、ディナスの影が見える。

「倒れる間もなかったか、ディナス」

カトブレパスがディナスに近付く。
すると、煙の陰から手が伸び、その手はカトブレパスの角を力強く掴んだ。

「何!?生きているのか!?」

「倒れる間もないんじゃねえ。倒れる必要がないのさ」

ディナスは手に力を込めると、バキッという音とともに、カトブレパスが横倒しになる。

「この角はいらんな」

カトブレパスの魔力の源である角が、片方折れた音であった。
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