魔界動乱期
ヌーのエリア

「妖狐よ、テメエが来てくれるとは手間が省けた。いずれ殺しに行く予定だったからなあ。ラウドと妖狐の殺す順番が逆になっただけだ!」

ディナスは叫びながら、炎の魔法を放った。
それはパーンの炎よりも薄い青。透明に近い青い炎である。

しかしその炎は、妖狐の前でブシュッと音を立てて消え去る。

「なんだ?消えた……いや、消された?」

【キメラよ、真の炎とはこういうモノだ。ヌシに見えるか?感じられるか?】

妖狐が掌を上に向けて、その手に火を灯す。実際には炎は見えず、灯している仕草をしているように見える。
しかし見えない炎は、回りの空気を確実に沸騰させていた。

【炎は熱くなるほど透明に近くなる。全てを燃やし尽くす炎は目に見えないものだ】

「ならば、テメエの力を吸収するだけだ!それからその力でラウドを殺し、俺が王になる!」

妖狐は炎を灯したまま、動きを止めた。

【深淵から沸き上がる‘魔’の力か。ふふ、面白い】

妖狐はそう呟き、少し離れた場所に腰を据えた。
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