魔界動乱期
ドンッ!
とジードの体から、一気に黒い魔力が広がった。

「なんだ、この魔力は!?」

その魔力は燃えるように熱く、そして妖狐よりも禍々しい。
離れていた仲間のラルーさえも恐怖にうち震える程の。

「ボ、ボス……一体どうしちまったんだ」

ディナスは先程戦った相手にも関わらず、つい口走る。

「だ、誰だテメエは……?」

「我が名は……ジード・エルナーク!」

【エルナークか。やはり……】

「うおおっ!!」

突如ディナスが激しい魔法攻撃を浴びせる。
その全てが全力で、ややもすればこの森ごと破壊しかねない程の破壊力を秘めた攻撃である。

「ずあっ!」

ジードが声を発すると、ディナスの放った攻撃が全てジードの前で掻き消された。
まるでどこかに消えてしまったように。

「何!?さっきの妖狐と同じ……!」

驚愕するディナスに、間髪入れずジードの拳が背中から突き刺さる。

「あがぁ!!……小僧!」

ダメージを負いながらも、裏拳を放つディナス。しかし既にジードはそこから移動しており、頭上から膝を、ディナスの頭に叩き落とした。
ズゴオッと地面にめり込むディナス。
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