魔界動乱期
【ほう、細胞同調か。これならラウドを殺すというのも自惚れではないようだな。もっとも、この状態は偶然だろうが】

今まで反発しつつも無理矢理ディナスの意思によって押さえつけられていた細胞達。
しかし死の危機に瀕した今、彼らは生きるためにディナスの細胞と同調する事を選んだのである。

細胞同調により、全てのベクトルがプラスに傾く。
溢れ出す魔力とは逆に、荒々しかったディナスのオーラが徐々に落ち着いた雰囲気へと変わってゆく。

「これからだ、ジード・エルナーク」

ディナスは常に、己の体内でも戦い続けていた。それが全てに対する怒りを膨らませ、憎悪を振りまく一因となっていたのだ。
しかしその内なる戦闘が収まった今、まるで別魔のように静かに、ジードが起き上がるのを待っている。

「ディナス……」

ジードはスクッと立ち上がり、ディナスの前に立つ。
しばしの静寂が流れたと思った次の瞬間、激しい殴り合いが始まった。
ノーガードで殴り合うジードとディナス。

腕が四本あり、体格でも遥かに上回るディナスと互角の戦いを繰り広げるジード。
しかしやがて均衡は崩れ、ディナスの拳がジードを後退させる。
ジードはその勢いに押されるように後ろに飛び退き、‘何か’を放った。
< 84 / 432 >

この作品をシェア

pagetop