魔界動乱期
「あん?なんだよ?」

「い、いや、なんでもない」

「しかしつくづくわからねえヤツだぜ。行動、強さ、若さ……」

見た目は若い妖狐だが、その年齢は二千歳とも三千歳とも言われ、ゾイドと並んで魔界でも最古参の魔族である。

ラウドとルークがこんな会話をしているが、彼らにとってはまだ終わったわけではない。
ディナスを倒してこそ、この戦争は終わると考えている。
ラウドはジードを抱え、高台に戻ることにした。

「ディナスはもう悪ではない、というような事を妖狐が言っていたな。だが、火種を作ったのはディナスだからな……。裁きはイグニに任せよう」

そして、かなりの手傷を負って自陣に戻ったディナスを待っていたのは、衝撃の光景であった。

「なぜ誰もいない?」

「よくお戻りなされましたな、ディナス様。ユニコーンの角で自分に影響を与えるには、まだまだ年月が必要じゃ。だからこそ好都合……」

「何を言って……て、テメエ!その額のラクリマは……!?」

「屈辱に耐え、お主に忠誠を見せつけた甲斐があったというもの」

「じゃあ、お、俺のこの額のラクリマは何だ!?」

ディナスが額のラクリマに触れると、それはビシャッと水となって飛び散った。

「よく出来てるじゃろう?儂の通常の魔法範囲の外まで形を持たせるために、かなりの魔力を用いたわい」
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