魔界動乱期
「アバルは学者の都と呼ばれておるからな。実際、キメラが大量生産出来るなら驚異じゃしの。もしくは何らかの力を手にしたか……。まあ、あくまで儂の推論じゃ。そんな予測もあって、この森を出るべきじゃとな」

このモルキの推論には、干渉されなかった数百年を考えると危機感を感じる事は難しいが、誰も異を唱える事は出来ないでいた。

近年急速に力をつけ、魔界で最も新しいメディオ・アバル。
学者の都と呼ばれる研究力で、過去の歴史を次々と解き明かし、禁断とも言える生物兵器をも開発した。

今後更なる発展を目指すのであれば、目の上のたんこぶである魔獣の森を野放しにするはずはない。
森の魔獣達にはアバル侵略の意思はないものの、アバルの住民からすれば静かなる恐怖に違いないからだ。

「杞憂で済めばいいが、もしアバルが攻めてきたなら、圧倒的少数の我々は……」

セラトが不安を口にする。
魔獣の森を駆逐するには大きな犠牲を伴うだろう、というのが一般的な考えである。
逆に言えば、犠牲は出るが駆逐出来る、という事なのだ。

「さて、儂は消えるとするか」

「逃がさない！」

去ろうとするモルキに、モノケロウスがモルキに飛びかかった。

「消えた！？くそっ！魔吸収の力はきっとヤツの心を狂わすに違いない」

魔吸収の力を得たモルキの存在、そしてアバル。
森の一大戦争は終わりを告げたが、新たなる暗雲が皆の心を覆っていた。
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