ブラッディマリー
 

 万里亜の紅い瞳がくりり、と動いて俊輔をとらえる。牙を阻む冷たい瓶が口唇に触れて、彼女の瞳がふ……と和らいだ。


 万里亜は一歩退がり、再び和を見る。



「和……ごめんなさい、あたし……」



 瞳と牙をそのままに、万里亜はふらふらと壁にもたれた。



「万里亜!?」



 和が咄嗟に駆け寄ると、万里亜は脱力してその腕の中に倒れ込む。


 万里亜を支え、和は軽い混乱に眩暈を覚えながら俊輔を見た。



「……俊、さん?」



 リキュールの瓶を引っ込めてカウンターの上にとん……と置き、俊輔は肩を竦める。

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