ブラッディマリー
 


 開店時間になっても開かない“HEAVEN”のドアに、「臨時休業」と手書きの紙が貼られていた。


 J-POPが小さく流れたままのその店内、テーブル席のソファーに万里亜を横たえ、和は彼女にひざ枕を施す。


 俊輔はカウンター席からそれを見つめ、紫煙を燻らせた。



「──自分の身体から血が流れるっていうのは、ヴァンパイアにとっちゃ命の危機でもある。だから、ヴァンプの女達は月のものがあると、普段は抑えられる本能が剥き出しになってしまうことが多いんだ」



 ──生理の時貧血を起こす女は少なくない。



 だから、俊輔の言葉はそれだけで充分納得出来るものだった。


 何度か万里亜に血を与えたけれど、瞳が紅く染まったり、牙が生えるところなど見たことがなかった。


 だから、驚いただけなのだと思う。

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