ブラッディマリー
 

 それでも認めることを躊躇う和に、俊輔は小さく肩を竦め笑う。



「判った、判った。だけどな、和」



 初めて聞く、どこか優しげな俊輔の声に、和は思わず彼の顔を見る。


 すると俊輔は和のその視線を待っていたかのように、にっと目を細めた。



「そういうのを、人間はとりあえず『好き』って言うもんなんだよ。恋なんてややこしいものじゃなくても、な」



 聞き分けのない子どもに愛情を持って言い聞かせる時の大人のような、俊輔の微笑み。


 和は睫毛を伏せると、万里亜の血の気のない仄白い頬をまた、そっと撫でた。



 人間が『好き』と呼ぶ気持ち──。



 どういう意味なのかを曖昧に出来るその言葉は、とりあえず今の自分に相応しいような、そんな気がした。









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