ブラッディマリー
陥落
万里亜が目を醒ます気配のないまま、時計の針は1時を指し、黙って待っていた俊輔は眉尻を下げて帰り支度を始めた。
「俺のことは、しばらく万里亜ちゃんには黙ってて。逃げて来た女の子を、わざわざ怖がらせるこたぁない」
そう言い残して、俊輔は帰って行った。
その言葉に納得した和は、俊輔が出て行った後のドアの鍵を閉めると、ふと思考を止める。
そういえば、俊輔がいつも時間厳守で店を閉めて帰る理由を、自分は全然知らないことに気が付いた。
しかも、それに全く興味を持って来なかった自分への疑問までついて来て、軽い戸惑いが胸を満たす。
──急に興味を持ったのは、俊輔が万里亜と同じヴァンパイアだと知ったから。
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